「シリア難民問題は過去のことじゃない」ドイツ難民支援プロジェクトのプロモーション映像を製作しました。
|難民問題はイマ起きていること
ドイツが100万人を超えるシリア難民を受け入れた2015年に比べると、最近はシリア難民の報道が少なくなってきている印象です。では、ドイツに命がけで逃れてきた100万人を超える難民と地域の住民は現在どのような生活を送っているのでしょうか?
私がここで言いたいことは「難民問題はカコではなく、イマ現在起きていること」だということです。僕の住むキールは人口24万人ほどと東京と比べるとはるかに小さな街ですが、それでもドイツに逃れて来た難民を社会に受け入れようとする活動が行政だけでなく学生の間からも生まれています。
|知っておきたい「全ての難民が持つ権利」と「受け入れ国が持つ義務」とは?
難民とは、戦争や人種差別、宗教的迫害、思想的弾圧、政治的迫害、経済的困窮、自然災害、飢餓、伝染病などの理由によって自国を離れざるを得ない状況になった、他国の庇護と援助を求める人々を指します。(参照:Wikipedia「難民」項)
また、国際法の中の難民条約にも、難民の権利や義務についての規定があり、UNHCRによると、
1.難民を彼らの生命や自由が脅威にさらされるおそれのある国へ強制的に追放したり、帰還させてはいけない(難民条約第33条、「ノン・ルフルマンの原則」)
2.庇護申請国へ不法入国しまた不法にいることを理由として、難民を罰してはいけない(難民条約第31条)
という決まりがあるということです。
(参照:UNHCR「難民条約について」)
|難民は受け入れ国の将来を担う貴重な人材
2015年ドイツが100万人を超える難民を受け入れた際に「ドイツは人道的で素晴らしい」という意見を聞きました。たしかに「人道的」な側面もあったでしょうが、そこにはドイツの現状と未来を見据えての計画的な政策もあったと思います。
日本と同じようにドイツでも少子高齢化が進んでおり、将来の人材確保が必須課題となっています。その一つの有力な方法が海外の人材をドイツで受け入れて、ドイツの社会で働いてもらい税金を納めてもらうことです。
そのため、
・ドイツが大量のシリア難民を受け入れたこと
・ドイツの国公立大学が「留学生にも」学費が無料なこと
この2つは、「人道的に素晴らしい」というだけの理由ではなく、ドイツの将来を見据えた計画的な政策だという専門家の意見を聞きますし、僕もそうだと思っています。
(ちなみに、「難民が犯罪を犯している」との報道がありますが、実際には「難民の方が犯罪率が高い」というデータはありません。日本人の中でも犯罪を犯す者がいるように難民の中にも犯罪を犯すものがいるというだけです。)
|シリアからの難民は「知的な難民」で有名
ドイツの行政に務める難民政策担当の方にインタビューをした際にうかがった話です。
『シリアから来た若い難民はみな英語が堪能なので、英語に近いドイツ語の習得が早いんです。さらに、シリアの学校教育では高校で皆数学を履修しているので、ドイツに来てからもエンジニアやプログラマーの働き口が開かれています。エンジニアやプログラマーの職種の募集は多く、高いドイツ語能力は求められません。』
また、シリアの国公立の大学でも大学の授業料は無料だと言われています。そのため、大学進学率は高く、英語が話せる教養がある人が多いです。
シリア難民の友人にこう尋ねられたことがあります。
『日本は経済的に世界で3番目な程に発展している国なのに、どうして大学の授業料がそんなに高いんだ?』
|日本でもできる自分たちの街に住む「身近な難民」を知る活動
ドイツでも日本でも、まずは自分たちの住む街の難民に目を向けて見ることから始めてみませんか。僕は東京に住んでいたときは「クルドを知る会」主催のクルド料理教室に参加したり、「難民収容所」として知られる茨城県牛久市の「東日本入国管理センター」に面会医の方と一緒に行ったりしていました。(「東日本入国管理センター」の難民への人権問題は国際的にも注目されていることなので、誰もが一度は調べてみていい問題だと思います。)
|「自分たちができること」から始まった語学マッチングサービス
今回紹介をする学生が立ち上げた難民支援プロジェクトKulturgrenzenlosは、ドイツに逃れて来た難民が社会に馴染みドイツ語を習得する支援を目的としており、「ドイツ語を学ぶ難民と、アラビア語を学びたいドイツ人学生」の語学パートナーのマッチングサイトを運営しています。
|「難民」は難民である前に、僕らと同じ一人の「人間」だ
この映像を見て「誰が母国に家族を置いて命からがら逃れて来た難民で、誰が難民でない」という印象を持つ人は少ないかと思います。それは、「難民」は難民である前に、僕らと同じ一人の「人間」だからだと思います。人間は誰であっても友達が必要で、社会の中での役割を欲し、好きなことにいきいきと思う存分のめり込みたいと思うもの。
言葉も文化も違う土地から家族を離れて逃れて来た難民には、受け入れる地域としてはそういったことを提供して、難民と地元民がお互いに歩み寄れる架け橋を作るのが良いのではないでしょうか。そうして、受け入れられた難民は将来の社会にとって貴重な人材になると見込めますし、受け入れ国側も学ぶことが多いはずです。
この映像をきっかけに、一人一人ができる範囲から身近な難民問題に取り組むことを願います。
日本語字幕が表示でき、ロングバージョンとショートバージョンがあります。
Kulturgrenzenlos プロモーション映像 ・ロングバージョン (Akihiro Yasui製作)
Kulturgrenzenlos プロモーション映像 ・ショートバージョン (Akihiro Yasui製作)
Kulturgrenzenlos: www.facebook.com/kulturgrenzenlos/