ロンドン発!「100万食以上の廃棄食品を救ったアプリ」 CEOとインタビューをさせていただきました。
楽しみな旅行をひかえた直前の週。
仕事の締め切りやメール対応に追われて、家のことが少しおろそかになってしまう時期。
いざ旅行に出る前日に冷蔵庫を開けて、買いすぎで残っている野菜や果物に当惑した経験は誰でも一度はあるのではないでしょうか?
今日紹介をするロンドンで開発されたアプリ「OLIO」はそんな時間がない時にも、写真を撮るだけで食材を捨てる代わりに誰かにあげることができる便利なアプリです。
アプリの使い方も映像にしたのでよろしければ参考にしてみてください。他にもヨーロッパの便利なサービスやエシカル製品を紹介しているので、チャンネル登録していただけましたら嬉しいです。
「100万食以上の廃棄食品を救ったアプリ」OLIO
OLIOは2015年にロンドンで誕生した「自宅で不要なものの写真をアプリに載せるだけで、地域の人に引き取りにきてもらえる」シェアリングアプリです。元々は家庭から出るフードロスを減らす目的で開発されましたが、現在は家具やおもちゃ、子ども服などの共有も行われています。
2018年現在およそ70万人がOLIOを利用し、これまでに100万食以上の廃棄されるはずだった食材が他の方に手渡されました。それは廃棄食品の輸送などにかかる二酸化炭素排出量に換算すると、およそ300万kmを自動車で走行するのと同等の二酸化炭素を抑えた計算に匹敵するそうです。
現在気候変動抑制に向けて、世界各国で規制が厳しくなっている温室効果ガス排出量を、イギリスではOLIOのアプリだけで自動車300万km分抑えていることになります。
アイデアは交換留学生の些細な経験から
現在ヨーロッパの「社会的課題 × ビジネス」の取り組みをインタビューと映像撮影をして回るツアー中で、先週ロンドンでOLIOのCEOであるTessa Cook氏とインタビューをさせていただく機会がありましたので今日は紹介したいと思います。
当日の映像と完全なインタビューの記事はウェブマガジンEarthackersで配信していきますので、よろしければYouTubeのチャンネル登録とFacebookのフォローをお願い致します。
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OLIOのアイデアが思いついたのは、創業者のちょっとした経験からでした。
後にイギリスで一つのムーヴメントを起こすアプリ「OLIO」を開発するTessaは、2014年当時スイスに交換留学をしていました。Tessaはいよいよ留学を終え、イギリスに帰る準備に追われていました。
『あれは2014年12月17日のことだったわ。』
今でもその日のことが鮮明に頭に残っているのでしょう。Tessaはロンドンでのインタビュー中、そうはっきりと話し始めました。
『スイスでの交換留学も最後の週で、イギリスに帰る準備も終えてほっと一息ついたところだったの。スーツケースに荷物を詰め込んで、クローゼットも空にしてもう明日家を出るだけだと思っていたわ。
落ち着いたところで、ハッとまだ家の中で片づけていないところを思い出したの。
冷蔵庫!
出発を翌日に控えてまだ食べられる野菜や果物がたくさん残っていたの。とても一日で食べきれる量じゃなかったわ。
野菜を育てて牛と一緒に生活をするような農家に生まれ育ったから、ファーマーズ・マーケットでこだわって買ったオーガニックや地域の野菜や果物だったわ。
「まだ食べられるものを、ごみ箱に捨てる」なんて誰でも嫌な思いしかしないと思うの。
特に農家で育った私は野菜や果物を育てることがどんなに大変なことかわかっていたから、人一倍心が痛んで捨てることなんてとてもできなかったわ。
それで、思いきって野菜や果物をダンボールに詰めて外に出て、見知らぬ人たちに尋ねて回ったの。「まだ新鮮な野菜や果物、ただで良いので引き取ってもらえませんか..?」って。
恥ずかしさよりも野菜や果物を捨てなくない思いの方がずっと強かったわ。
けど、受け取ってくれる人はほとんどいなかったの。現地の言葉もカタコトの見ず知らずの学生が、しかも無料で野菜や果物をあげようとしてるなんて「きっとなにかあるに違いない」と思われていたんでしょうね。
勢いで外に飛び出したけれど、受け取ってもらえないことで急に現実に戻されたような感覚になったわ。』
「なんでこんな恥ずかしい思いをしなければいけないんだろう。野菜や果物が新鮮なことを知ったら、引き取ってくれる人は必ずこの地域にいるはずなのに..。」
「もっと簡単な方法で、みんなが食べきれないものを地域でシェアできる仕組みがあればいいのに。」
その瞬間でした。Tessaは現在ヨーロッパで70万人が利用するアプリ「OLIO」のアイデアを思いついたのです。
英語では”lightbulb moment”。まさにアイデアが閃いた瞬間でした。
イギリスに帰国したTessaは早速、昔からなんでも話せる親友のSaashaにこのアイデアを話しました。
Saashaは「素敵なアイデア!絶対にできる!」とたちまち共感し、Tessaと一緒にOLIOの開発を進めることになるのです。SaashaはTessaと共に後にOLIOの共同創業者になります。
(共同創業者のSaasha Celestial-One(左)とTessa Cook(右))
自分たちの「アイデア」を、みんなの「サービス」にする
「家庭で食べきれない食材の写真をオンラインにアップして、地域の他の人が引き取りに来られる」
そんなアプリのアイデアが果たして需要があり、うまくいくのか試したかったTessaとSaashaは、Whatsapp(日本のLINEアプリ)を使ってテストをすることにします。
仕組みはこうです。TessaとSaashaが住む地域の12人をひとつのWhatsappのグループに招待しみんなでチャットができるようにします。
ルールは「自宅でまだ食べられるけれども、不要な食品や食べきれない食材が出たら、写真を撮ってそのグループにアップすること」。
12名はそのルールだけを守ってあとは通常通り、2週間を過ごしました。
TessaとSaashaは最初の食材の写真がアップされるかどうか、12人が参加するWhatsappグループを息を飲んで見つめます。
すると、Whatsappの通知アラームが鳴り響き、最初の写真がアップされました。
袋詰めのまだ半分ほどが残ったたまねぎの写真でした。たちまち別の参加者が受け取りにうかがえる日時を伝え、最初の「引き取り」が行われたのです。
「あの瞬間は今でもくっきりと覚えているわ。Saashaと私は言葉にできないくらい跳びはねて喜んだのよ!」Tessaは当時を振り返ります。
その後も12名の参加者によって続々と「写真のアップ」と「引き取り」が行われ、2週間のテスト期間が終わりました。
テスト期間後に参加者を集めて感想をもらうと、一同は口を揃えて言いました。
「信じられない。とっても素晴らしいサービスだわ!」
こうしてTessaとSaashaは本格的にアプリの開発を始めていったのです。
同じくイギリスの若者が開発したアプリToo Good To Goとの違い
僕のブログを読んでいただいている方は、以前紹介したアプリToo Good To GoとOLIOがどう違った仕組みなのか気になると思います。
大きな違いは、Too Good To Goは「お店の売れ残りを格安で購入できる」のに対して、OLIOは「家庭の食材を無料で引き取れる」ということです。
また「無料で引き取る」という特色もあり、OLIOの引き取りは自転車で向かえる2km圏内で行われることが一番多いそうです。
Too Good To GoのCEOとも先週ロンドンでインタビューと映像撮影をさせていただきましたので、詳しくはこちらの記事を参照ください。
『デンマーク発「700万食の廃棄される料理を救ったアプリ」Too Good To Go 共同創業者とインタビュー致しました。』
(*Too Good To Goはイギリスの2人の若者が留学先のデンマークで起業したアプリです。)
イギリス全土へ、国外へ。発展を続ける「OLIOコミュニティー」
OLIOは2km圏内のコミュニティーで利用する人が最も多いということで、イギリスの他の地域でも「自分たちの街でもOLIOの参加者を増やして、コミュニティーを作りたい!」という希望が後を立ちません。
そういった「OLIOがまだない地域に広めたい人たち」の自主的な呼びかけや広告、口コミによってOLIOコミュニティーは創業わずか3年目にしてイギリス全土に広まっています。
Tessaは言います。
「今はスペイン語でも利用できるアプリの開発も進めていて、今後は世界中にOLIOコミュニティーを広めていきたいわ。」
「まだ食べられるものと、必要とする人を繋ぎたい。」
交換留学生の純粋な思いから生まれた一つのアイデアは、今ヨーロッパ各地でまだ食べられるもの・まだ使えるものをシェアし合う一大ムーヴメントを引き起こしています。
地域のコミュニティー向けに作られたアプリですが、もちろん旅行者でも使用できるのでヨーロッパを訪れた際には皆さんもぜひ一度使ってみてください。
「まだ食べられるもの・まだ使えるものは、捨てる代わりにみんなでシェアし合おう」
日本でも広まったら素敵な取り組みになりそうです。
Aki
インタビューの続きと撮影した映像はサスティナブル・ウェブマガジンEarthackersで配信致します。
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OLIO: olioex.com
(左:Tessa Cook氏)
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Aki