オランダのスタートアップが開発した「世界一エシカルなスマートフォン」Fairphone
“We aim to create positive social and environmental impact from the beginning to the end of a phone’s life cycle.” – Fairphone
Akiです。オランダのスタートアップが開発した「世界一エシカルなスマートフォン」とも言われるFairphoneを使い始めて1ヶ月になるのでレビューを書きます。Fairphoneは先日の一時帰国中に、各地での講演会や企業数社でも紹介させてもらったのですが、どこでもとても関心が高かったです。
オランダのスタートアップが開発した新しいスマホがやってきた!その名も #Fairphone。紛争の原因になっている鉱物等を一切使用しない世界一エシカルなスマホ。不法な児童労働で製造されてないことも認定されています。来週帰国時の各講演会に持っていって色々話そうと思います。ブログにも書きます! pic.twitter.com/J0w2mOsl7L
— Aki Youtuber@Germany (@akihiroyasui_) 2017年12月7日
オランダのスタートアップが開発した「世界一エシカルなスマホ」 #Fairphone のレビューを書きました!紛争鉱物が極限に抑えられ、不当な児童労働で製造されてないことが認定されてます。特徴の一つである各パーツの交換方法も動画で紹介します。日本でも広まってほしいです!https://t.co/npiv7gWRFb pic.twitter.com/7McXyQT7w0
— Aki Youtuber@Germany (@akihiroyasui_) 2018年1月21日
2月か3月にオランダのFairphone本社に訪れる予定なので、日本での販売に興味がある企業や団体があれば是非連絡をください。日本での販売に興味を持ってもらえるか話をしてきたいと思います。Fairphone販売のキャンペーンを日本でやることで、多くの日本の方にも紛争鉱物(Conflict Mineral)や不当な児童労働の問題、使用済みになったスマートフォンがどのように処分されているのかを考えてもらえるきっかけになればと思っています。御連絡お待ちしています。
Fairphoneのパーツの組み替え方法を動画にしましたのでよろしければ参考にしてみてください。
|Fairphoneとは?
Fairphoneは2012年にオランダのスタートアップが開発したスマートフォンで、「世界一エシカルなスマートフォン」とも言われています。2013年に発売した新型モデルの「Fairphone 2」は現在予約待ちが出るほどの人気で、2017年中旬にはFairphone1と2の総計で130,000台が販売されたと発表がありました。
Fairphoneはアムステルダムのエンジニア兼デザイナーのBas van Abelによって考案されました。Bas van AbelはFablab Amsterdamの立ち上げに参与し、Fairphoneを始めとする数々のオープンデザインプロジェクトに関わっています。Fairphone開発の背景には、2007年のiPhoneの誕生以降世界中に急速に広まったスマートフォンのテクノロジーを自身も享受しながら、一方でBas van Abelはスマートフォンの大量生産が引き起こす様々な問題を懸念したことがありました。
世界を圧巻したiPhoneに続こうと世界中でスマートフォンの開発が進む中で、「格安スマホ」を開発しようと紛争鉱物(Conflict Mineral)を使用したスマートフォンや、劣悪な環境での不当な児童労働で製造されるものが市場に供給されるようになりました。オランダ屈指のエンジニア兼デザイナーとしてこうした問題を目の当たりにしたBas van Abelはそれまでになかった全く新しいスマートフォンの開発を計画していきます。
そうして2013年に、「4大紛争鉱物」に指定される2種類の鉱物、コルタンと錫石を紛争地域以外のものを使用し、全ての鉱物産出地と製造業者を公開した世界で初めてのスマートフォンFairphone 1は誕生し、環境と人権に配慮した「エシカルフォン」として世界に知られるようになりました。販売同年には当初販売を見込んでいた25,000台はすぐさま完売し、翌年には追加販売をした35,000台も即座に売り切れる程の人気を集めました。さらに、2015年にはFairphone1に改良を加えたFairphone2が販売され、2017年7月にはFairphone1と2を合わせた出荷台数が130,000台を超えたと発表されました。
(参照:https://shop.fairphone.com/en/)
Fairphoneは特に以下4つの点で従来のスマートフォンと異なっています。
1. 紛争鉱物(Conflict Mineral)の使用が極限まで抑えられている
2. 不当な児童労働による製造がされていない
3. 長期間使用可能に設計されている
4. 全てリサイクル可能なパーツで構成されている
(*Fairphoneにも一部紛争地域からの鉱物は使用されていて、現在は代替となるものを調査中とのことです。)
1. 紛争鉱物(Conflict Mineral)の使用が極限まで抑えられている
|「紛争鉱物(Conflict Mineral)」とは何か?
スマートフォンの製造にはおよそ30種類もの鉱物が必要と言われています。その中でも「紛争鉱物(Conflict Mineral)」とは、「鉱物が産出・販売されることが、その地域での紛争が発生する原因になっているもの」を指します。「4大紛争鉱物」(3TGs) として知られているのが、金、錫石、コルタン、タングステンであり、スマートフォンの製造にはこれら全ての鉱物が必須と言われています。
「紛争ダイヤモンド」について日本語のWikipediaに説明がありました。
「ダイヤモンドなどの宝石は、国際市場で高値で取引される。産出国にとっては貴重な外貨獲得資源となるが、その産出国が内戦など紛争地域だと、その国は輸出したダイヤモンドなど宝石類で得た外貨を武器の購入に充てるため、内戦が長期化および深刻化することになる。とくに反政府組織はこれら鉱物資源による外貨獲得とそれによる武器購入を広く行っている。その際には罪のない人々を採掘に苦役させることから人道上も大きな問題がある。
これら内戦の早期終結を実現するには内戦当事国の外貨獲得手段を奪うのが有力な手立てであり、国際社会はそれに取り組むべきだとされる。内戦当事国に外貨が流れ込まないようにするために、内戦国から産出するダイヤモンドなどを「紛争ダイヤモンド」と定義し、関係業界はそれらを取引の対象外にすることが求められている。」
(参照:Wikipedia『紛争ダイヤモンド』)
「紛争ダイヤモンド」についてはこちらの映画が有名です。
例えば、世界屈指の豊かな資源産出国であるアフリカのコンゴ民主共和国では約30年間にも渡って内戦や民族対立が収まっていません。その原因の一つは外国籍の企業がコンゴの紛争地域から産出される鉱物を購入することであると言われています。コンゴ民主共和国で産出された鉱物が売れたとしても、一般の労働者が手にする給料はほんのわずかで、過酷な労働条件を強いている反政府軍(軍事組織)の収入源になっていると報道されています。こうした紛争鉱物を購入しているグローバル企業の中にはAppleやSamsung、Sonyも含まれているとの報告もあります。(参照:“This is what we die for” by Amnesty International)
英誌The Guardianがコンゴ民主共和国の紛争鉱物とスマートフォンを取り上げたショートドキュメンタリーを製作しています。
|グローバル企業がコンゴ民主共和国の「紛争鉱物」を購入する理由
4大鉱物(3TGs)の一つである金を見てみましょう。世界で金の産出量が多い国は、
1. 中国 (450t)
2. オーストラリア (278t)
3. ロシア (252t)
4. アメリカ (214t)
5. カナダ (153t)
であり、コンゴ民主共和国は決して世界でも金の産出量が多い国ではありません。
それではなぜ多くのグローバル企業は「紛争鉱物」の一つである金をコンゴ民主共和国から購入しているのでしょうか?
その理由は大きく分けて2つあります。
1つは他の国から産出される金よりも安く手に入るからです。
例えば、上記の金産出国の平均月収を見てみましょう。
1. 中国 $688
2. オーストラリア $4,549
3. ロシア $810
4. アメリカ $4,734
5. カナダ $3,638
これに対してコンゴ民主共和国の平均月収はわずか$36です。コンゴ民主共和国ではその分だけ人が安く動員されて金が産出されるため、外国籍の企業はそれだけ金を安く購入できるということです。
しかし、たとえグローバル企業が大量の金を購入したとしても、金の採掘に従事するコンゴ民主共和国の一般の労働者が手にするお金はほんのわずかです。先のGuardianのドキュメンタリーでも表されていたように、反政府軍(軍事部隊)が利益を搾取しているからです。
2つ目の理由はコンゴ民主共和国がスマートフォンの製造に必要な他の鉱物も産出できるということです。
スマートフォンには30種以上の鉱物が使用されています。その一つで4大紛争鉱物にも指定されているコバルトの世界埋蔵量の半分が眠っているとも言われるほど、コンゴ民主共和国は多様な鉱物に恵まれた資源の豊かな国です。グローバル企業からすると、必要な鉱物が一国から産出されることは輸送費や交渉労力の面でメリットがあります。
Fairphoneは自社のスマートフォンに使用されている全ての鉱物の産出国・地域と部品供給先が公表されており、誰もが調べられるように透明性が図られています。
Fairphoneの部品供給サプライヤー一覧;https://www.fairphone.com/wp-content/uploads/2016/10/List-of-Suppliers_Aug2016.pdf
スマートフォンの製造に必須な鉱物の情報:https://www.fairphone.com/wp-content/uploads/2017/05/SmartphoneMaterialProfiles_May2017.pdf
2. 不当な児童労働による製造がされていない
国際機関アムネスティーインターナショナルの調査によると、Apple、Samsung、ソニーを含むスマートフォン事業で上位を占める会社の製造には児童労働が関わっている可能性があるということです。それに対して、Fairphoneは使用されている鉱物の採掘や製造に児童労働が行われていないことが第三機関の認定によって証明されています。
不当な「児童労働」と聞いても実際にどのような環境なのかピンとこない人も多いかと思います。以下はアムネスティーによる児童労働を報じた映像です。
(参照:Amnesty International “Exposed: Child labour behind smart phone and electric car batteries”)
3. 長期間使用可能に設計されている
一般的にスマートフォンは2-3年の周期で新しいものに買い替えられていると言われています。その理由の多くは「カメラを最新のものにしたい」、「パーツの一部が故障してしまった」という一つ一つの部品に由来するものだそうです。
Fairphoneはこうした買い替えの理由に目をつけ、スマートフォンのデザインを根本から見直しました。それは当時世の中になかった世界で唯一の「自分でカメラ、マイク、スピーカーモジュールを交換できる」という設計です。これによりスマートフォンの「寿命」は従来の2-3年から格段に伸び、5-10年使用できる設計になったとFairphoneはPRをしています。
各パーツはFairphoneのホームページから注文をして取り寄せることができます。部品だけで購入し自分で交換することで、最新のカメラを購入する場合でも45ユーロ(約5,000円)と価格が抑えられています。
(参照:https://shop.fairphone.com/en/spare-parts/)
Fairphoneのパーツの交換方法を動画で解説しましたので、よろしければ参考にしてみてください。
4. 全てリサイクル可能なパーツで設計されている
スマートフォンには多くの鉱物が使用されていますが、複雑に組み合わされているために再び純度の高い資源を採取するのは困難であると言われています。Fairphoneは設計の段階からリサイクルすることが考えられているので、利用者からFairphoneを回収した後にもそれぞれの資源に分類して再利用がしやすい設計になっています。
Fairphoneにはリサイクルプログラムが設けられており、使用済みになった部品はFairphoneに送り返すことによってFairphoneでリサイクルされます。欧州圏のみオンラインから引き取りの注文を出し、配送業者が用意をした梱包材に使用済み部品を詰めるだけで送料無料で自宅まで引き取りにきてもらえます。
(参照:https://www.fairphone.com/en/2018/01/15/your-old-phone-is-calling-it-wants-a-new-life/)
Akihiro Yasui
1leave-taking
June 22, 2022 @ 1:02 pm
1sophist